免許をとろう
計画をたてた。何ヶ月、もしかしたら、何年にもわたる計画になってしまうかもしれない。
上手くいくといいが。
まずは車を買った。彼女の為の車だ。
…いや、その態度は卑怯というものだろう。それは、やはり私の為の車なのだ。最終的に彼女の所有物になろうとも。
計画の第一段階として彼女にはまず助手席に乗ってもらい、車内が居心地のいい空間と認識してもらえるように努めた。
エアコンの設定を暑過ぎず寒過ぎず適度な温度に保つよう気をつかいつつ、それでも調整しきれない場合を考えてブランケット、クーラーボックスをなどを常備する。芳香剤を切らさないよう注意し、時には車用アロマなども試してみる。カーナビは最新式のブルーレイ内蔵型を用意する。
勿論、運転そのものにも神経をつかった。
遅過ぎず速過ぎずの安全運転。そして、なにより常に楽しそうに笑顔で運転することを心掛ける。私が不機嫌な態度で運転していれば、ひいては車自体に悪感情を持ってしまうかもしれない。それでは、計画は台無しだ。
計画の第二段階として彼女に車の利便性を実感してもらうように努めた。
ドライブデートを増やし、目的地は車でしか行けないような場所にする。どんな時間・場所であろうと彼女の求めがあればできるだけ送迎するようにする。しかし、同時にあえて迎えに行かない日を設けた。そうしないと、便利なのは車ではなく私であると勘違いしてしまうからだ。
そして遂に彼女は言った。
「車の免許とろうかな。」
計画は順調に進んでいる。
思い立ったら吉日。すぐに自動車教習所の入学手続きを取ってやる。そのための資金も貸してあげた。これで途中で辞めることもないだろう。合宿なら辞める心配もないのだが、そこで悪い虫がついたりしたら元も子もない。諦めよう。
教習所に通い出してからは私の出来る事は少ない。さぼらないよう送迎するか、モチベーション維持のために車のカタログをプレゼントすること位だっただろうか。最も、彼女は教習所においては優等生だったようで、その辺りの心配は必要なかったが。
そして今、様々な苦労をした甲斐あって私は彼女の運転する車の助手席に座っている。
ああ、何と居心地がいいのだろう。私はシートに深く沈み込み物思いに耽る。
この車で、彼女の運転で、多くの思い出を作った。
はじめてのドライブスルー。注文カウンターから離れて止めすぎたせいで、大声で注文するはめになった彼女が微笑ましかった。
はじめてのセルフガソリンスタンド。携帯片手にガソリンを入れる彼女に肝を冷やした。
はじめての高速道路。あまりに快適で途中で寝てしまった。
運転を交代しながらの京都旅行。生意気にも私の運転に文句をつけてきた。
いや、もしかしたらもう彼女の方が運転は上手いのかもしれない。現にすっかり彼女が運転で私が助手席という形が板についてしまった。
幸福感すら感じてしまう。ずっと、この時が続けばと思う。
だが、私はこの居心地のいい幸福な空間から離れなければならない。
私達はあんなにも居心地がよく安全な子宮から飛びだした。何故か。答えは単純。自分のいるべき場所はここじゃないと理解していたからだ。
私のいる場所もここじゃない。
私が求めていたのはこれじゃない。
計画は達成されなければならない。
計画のラストピースは勇気。そう勇気を出して告白するのだ。
「ねえ、○○。…いえ、○○様。この車で、あなた様のこの車で私を轢いてください。残酷に、徹底的に、轢いてください。」
「…は?」
…。
…。
…次は彼女のS性を育てる計画を立てないとな。
上手くいくといいが。
まずは車を買った。彼女の為の車だ。
…いや、その態度は卑怯というものだろう。それは、やはり私の為の車なのだ。最終的に彼女の所有物になろうとも。
計画の第一段階として彼女にはまず助手席に乗ってもらい、車内が居心地のいい空間と認識してもらえるように努めた。
エアコンの設定を暑過ぎず寒過ぎず適度な温度に保つよう気をつかいつつ、それでも調整しきれない場合を考えてブランケット、クーラーボックスをなどを常備する。芳香剤を切らさないよう注意し、時には車用アロマなども試してみる。カーナビは最新式のブルーレイ内蔵型を用意する。
勿論、運転そのものにも神経をつかった。
遅過ぎず速過ぎずの安全運転。そして、なにより常に楽しそうに笑顔で運転することを心掛ける。私が不機嫌な態度で運転していれば、ひいては車自体に悪感情を持ってしまうかもしれない。それでは、計画は台無しだ。
計画の第二段階として彼女に車の利便性を実感してもらうように努めた。
ドライブデートを増やし、目的地は車でしか行けないような場所にする。どんな時間・場所であろうと彼女の求めがあればできるだけ送迎するようにする。しかし、同時にあえて迎えに行かない日を設けた。そうしないと、便利なのは車ではなく私であると勘違いしてしまうからだ。
そして遂に彼女は言った。
「車の免許とろうかな。」
計画は順調に進んでいる。
思い立ったら吉日。すぐに自動車教習所の入学手続きを取ってやる。そのための資金も貸してあげた。これで途中で辞めることもないだろう。合宿なら辞める心配もないのだが、そこで悪い虫がついたりしたら元も子もない。諦めよう。
教習所に通い出してからは私の出来る事は少ない。さぼらないよう送迎するか、モチベーション維持のために車のカタログをプレゼントすること位だっただろうか。最も、彼女は教習所においては優等生だったようで、その辺りの心配は必要なかったが。
そして今、様々な苦労をした甲斐あって私は彼女の運転する車の助手席に座っている。
ああ、何と居心地がいいのだろう。私はシートに深く沈み込み物思いに耽る。
この車で、彼女の運転で、多くの思い出を作った。
はじめてのドライブスルー。注文カウンターから離れて止めすぎたせいで、大声で注文するはめになった彼女が微笑ましかった。
はじめてのセルフガソリンスタンド。携帯片手にガソリンを入れる彼女に肝を冷やした。
はじめての高速道路。あまりに快適で途中で寝てしまった。
運転を交代しながらの京都旅行。生意気にも私の運転に文句をつけてきた。
いや、もしかしたらもう彼女の方が運転は上手いのかもしれない。現にすっかり彼女が運転で私が助手席という形が板についてしまった。
幸福感すら感じてしまう。ずっと、この時が続けばと思う。
だが、私はこの居心地のいい幸福な空間から離れなければならない。
私達はあんなにも居心地がよく安全な子宮から飛びだした。何故か。答えは単純。自分のいるべき場所はここじゃないと理解していたからだ。
私のいる場所もここじゃない。
私が求めていたのはこれじゃない。
計画は達成されなければならない。
計画のラストピースは勇気。そう勇気を出して告白するのだ。
「ねえ、○○。…いえ、○○様。この車で、あなた様のこの車で私を轢いてください。残酷に、徹底的に、轢いてください。」
「…は?」
…。
…。
…次は彼女のS性を育てる計画を立てないとな。