はやい男
「私、はやいんです。」
マゾの一言に私は思わず舌打ちをしそうになる。
全く空気の読めない奴はどうしようもない。今、どういう状況なのかこいつはわかっているのか。二人で積み重ねていったセッションのクライマックスではないか。お前は黙って私の言う通りにしていればいいのだ。
「お前が情けない早漏野郎だろうが関係ない。私の許可なく射精したらどうなるかわかっているでしょうね。わかったらさっさとその汚いものを扱きなさい。」
これだけ説明すれば、空気の読めないこいつでもわかるだろう。もし仮に早く逝ったからといって悪いようにはしないと言っているのだ、さっさとはじめやがれ。
「いえ、そうではなくて…。私、はやいですから…」
男の煮え切らない態度に、今度こそ本当に舌打ちしてしまう。
「だから…、お前が早漏だとか…。」
「早漏ではないのです。」
話を遮られた。演技としての怒りではなく、本物の怒りが込み上げてくる。
「はあ。あんたがはやいだのなんだの言ったんだろうが。」
部屋中にヒステリックな叫び声が響き渡った。
やってしまった。一気に血の気が引く。
何とか、立て直してセッションをやり直さなければならない。とりあえず、問いただす形をとることにする。
「…お前は何が言いたいの。わかりやすいように話しなさい。」
男もまた、一度脱げてしまったマゾの仮面を被り直すように、それらしく話し出す。
そう、この男は先ほどまでセッションに協力的だったのだ。
「はい。先ほど言いましたように、私は早漏ではないのです。その早いではなく、速い。つまり、速漏です。」
…何を言ってるんだこいつは。言ってる事がさっぱりわからない。早いではなく速い?速漏?これではセッション以前にコミュニケーションすら取れないではないか。
「えーと、ごめん。言ってる意味がわからないんだけど。どういう事?」
最早女王様でもなんでもない。完全に素で質問してしまった。
「簡単に言えば、私は精液の飛ぶスピードが速いんです。普通の人はピュッと飛ぶと思うんですが、私の場合はビュッです。ですから、先ほどはこう言いたかったのです。速いから気を付けてくださいと。速いということは威力があるということですから。」
そして、男は挑戦的な顔でこう言った。
「私の精液は痛いですよ。」
俄然、興味が湧いてきた。
「へえ、じゃあ目の前で速漏の射精を見せてみてよ。」
そう言ったとき、私は女王様の顔というより女の顔になっていたと思う。
男がアソコを扱き始める。
文字通り目と鼻の先に男性器がある。こんなに間近で、見たのは久しぶりだ。
いたずら心が頭をもたげる。
「ねえ、私も扱いていい?」
と言ったそばから、男性器を掴む。懐かしい感触。
その瞬間。
「ああ、逝きます。」
「え?もう逝くの?やっぱりお前早漏じゃない。」
あ、女王様に戻った。
「ああ、ダメです。これはやばい。あぶない逃げて下さい。出る!」
男の絶叫。
頬に風を感じる。キーンという耳鳴り。そして、痛み。
「え?」
目の前が真っ暗になった。
「○○様、○○様、大丈夫ですか?」
突然、男の顔が視界一杯に飛び込んできた。
心配そうな顔。
その顔を見ているうちに、自分に起こったことを理解していく。
「え?私気絶したの?」
「はい。精液が直接当たったわけではないのですが…。恐らく風圧の威力で失神してしまったのではないでしょうか。」
「…こんなのはじめて。」
混乱のあまり、生娘みたいな事を口走ってしまった。顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。
恥ずかしくて男を見れないが、どんな顔をしているかは想像できる。
…むかつく。
私を誰だと思っているのだ。お前が何しにここにきたか、思い出せてやらなければならない。
男の手を振り払い、よろけないようゆっくりと立ち上がる。
「お前…。」
ちょっと声がうわずってしまった。
「お前、誰が逝っていいなんて言ったの。私に許可なく射精したらどうなるんだっけ?」
男の顔がみるみると愛おしい表情に変わっていく。
「も、申し訳ありません。」
「お仕置きね。」
「…はい。」
恐怖と悦びが入り混じった表情で男は返事をした。
うん。うん。これこそがセッションだ。だから言ったではないか。
速く逝ったからといって悪いようにはしないと。
マゾの一言に私は思わず舌打ちをしそうになる。
全く空気の読めない奴はどうしようもない。今、どういう状況なのかこいつはわかっているのか。二人で積み重ねていったセッションのクライマックスではないか。お前は黙って私の言う通りにしていればいいのだ。
「お前が情けない早漏野郎だろうが関係ない。私の許可なく射精したらどうなるかわかっているでしょうね。わかったらさっさとその汚いものを扱きなさい。」
これだけ説明すれば、空気の読めないこいつでもわかるだろう。もし仮に早く逝ったからといって悪いようにはしないと言っているのだ、さっさとはじめやがれ。
「いえ、そうではなくて…。私、はやいですから…」
男の煮え切らない態度に、今度こそ本当に舌打ちしてしまう。
「だから…、お前が早漏だとか…。」
「早漏ではないのです。」
話を遮られた。演技としての怒りではなく、本物の怒りが込み上げてくる。
「はあ。あんたがはやいだのなんだの言ったんだろうが。」
部屋中にヒステリックな叫び声が響き渡った。
やってしまった。一気に血の気が引く。
何とか、立て直してセッションをやり直さなければならない。とりあえず、問いただす形をとることにする。
「…お前は何が言いたいの。わかりやすいように話しなさい。」
男もまた、一度脱げてしまったマゾの仮面を被り直すように、それらしく話し出す。
そう、この男は先ほどまでセッションに協力的だったのだ。
「はい。先ほど言いましたように、私は早漏ではないのです。その早いではなく、速い。つまり、速漏です。」
…何を言ってるんだこいつは。言ってる事がさっぱりわからない。早いではなく速い?速漏?これではセッション以前にコミュニケーションすら取れないではないか。
「えーと、ごめん。言ってる意味がわからないんだけど。どういう事?」
最早女王様でもなんでもない。完全に素で質問してしまった。
「簡単に言えば、私は精液の飛ぶスピードが速いんです。普通の人はピュッと飛ぶと思うんですが、私の場合はビュッです。ですから、先ほどはこう言いたかったのです。速いから気を付けてくださいと。速いということは威力があるということですから。」
そして、男は挑戦的な顔でこう言った。
「私の精液は痛いですよ。」
俄然、興味が湧いてきた。
「へえ、じゃあ目の前で速漏の射精を見せてみてよ。」
そう言ったとき、私は女王様の顔というより女の顔になっていたと思う。
男がアソコを扱き始める。
文字通り目と鼻の先に男性器がある。こんなに間近で、見たのは久しぶりだ。
いたずら心が頭をもたげる。
「ねえ、私も扱いていい?」
と言ったそばから、男性器を掴む。懐かしい感触。
その瞬間。
「ああ、逝きます。」
「え?もう逝くの?やっぱりお前早漏じゃない。」
あ、女王様に戻った。
「ああ、ダメです。これはやばい。あぶない逃げて下さい。出る!」
男の絶叫。
頬に風を感じる。キーンという耳鳴り。そして、痛み。
「え?」
目の前が真っ暗になった。
「○○様、○○様、大丈夫ですか?」
突然、男の顔が視界一杯に飛び込んできた。
心配そうな顔。
その顔を見ているうちに、自分に起こったことを理解していく。
「え?私気絶したの?」
「はい。精液が直接当たったわけではないのですが…。恐らく風圧の威力で失神してしまったのではないでしょうか。」
「…こんなのはじめて。」
混乱のあまり、生娘みたいな事を口走ってしまった。顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。
恥ずかしくて男を見れないが、どんな顔をしているかは想像できる。
…むかつく。
私を誰だと思っているのだ。お前が何しにここにきたか、思い出せてやらなければならない。
男の手を振り払い、よろけないようゆっくりと立ち上がる。
「お前…。」
ちょっと声がうわずってしまった。
「お前、誰が逝っていいなんて言ったの。私に許可なく射精したらどうなるんだっけ?」
男の顔がみるみると愛おしい表情に変わっていく。
「も、申し訳ありません。」
「お仕置きね。」
「…はい。」
恐怖と悦びが入り混じった表情で男は返事をした。
うん。うん。これこそがセッションだ。だから言ったではないか。
速く逝ったからといって悪いようにはしないと。